デニムの神々が愛した「幻の裏地」を纏う、ただ一つの座椅子。
Gジャンを「育てる」。
デニム好きなら、誰もがその言葉の意味を知っている。リジッドから履き込み、自分だけの色落ち(フェード)とヒゲを刻み込むこと。
だが、真の探究者は、デニムの「表」だけではなく、その「裏」に隠された物語にこそ価値を見出す。
1960年代初頭。 ひとつの「時代」が終わり、新しい「ファッション」が生まれようとしていた、あの過渡期。 ベースとなったのは、ワークウェアの武骨さを脱ぎ捨て、現代のGジャンの原型となった、あまりにも有名な「サードタイプ(Type III)」のジャケット 。
しかしごく短期間だけ、その美しいシルエットの内側に時代の「矛盾」そのものを縫い付けた、幻のモデルが存在した。 防寒という、古き良きワークウェアの目的のために。 その裏地に使われたのが、「XXデニム」や「ビッグE」の時代を知る者だけが、その価値を理解できる、あの伝説のブランケットだった。
矛盾から生まれた「幻」
そのブランケットは、ただものではなかった。 再生ウール(Shoddy)特有の、ゴワゴワとした無骨な質感 。 グレー、ブラウン、黒が混じり合う複雑な杢調(もくちょう)のベースに、赤、青、黄色の「ネップ(繊維の塊)」がランダムに顔を出す 。 そして、その全てを貫く、ダークネイビーと鮮烈なレッドのストライプ 。タイトで美しい「ファッション」としてのGジャンに、最も無骨な「ワークウェア」の裏地を組み合わせる 。
この「美しい矛盾」こそが、このモデルが短命に終わった理由であり、現代において1着20万、30万 で取引される「幻」となった核心である。
内側から、デニムを「育てる」裏地
真のデニム好きがこだわるのもの。それは、「裏地のアタリ」 。
このゴワゴワしたウールブランケットが、着用者の動きに合わせ、ジャケットの「内側」からデニム生地を擦り、押し上げる。 その結果、ライニングの縫い目や生地の凹凸が、表地のデニムに「幽霊(ゴースト)」のように浮かび上がる 。
これこそ、このブランケットライニングでしか味わえない、最高峰の「経年変化(エイジング)」。 この生地は、それ自体が美しいだけでなく、デニムを内側から「育てる」ための、最強の触媒だった。
二つの「工房」の魂が、交差する
私たちは、この歴史的なテキスタイルに敬意を表し、現代の技術で忠実に復刻された、椅子張り用のヘビーデューティーな生地と出会った。
そして、この「アメリカの歴史」を象徴するモチーフを、私たちの工場へと持ち込んだ。
1927年、大阪・富田林で創業。ゼロ戦の椅子 から始まり、日本の「座る」を支えてきた、カナタ製作所の職人技術 。 身体を支える多層ウレタン構造と、堅牢なフレーム。修理を前提とした、一生モノの設計思想。
、本物を知る大人のための座椅子。 ジーンズを愛するあなたがこの椅子に深く腰掛ける。 そんな「デニムのある日常」の、最後のピースである。
MP Chair S-8ブランケット レッド(レッド・イエローの2色展開)